フィルムコンデンサ
2019年11月26日
ワイドバンドギャップ半導体用の革新的な電力用コンデンサ技術
パワーエレクトロニクスの分野では、従来のシリコン素材の半導体が窒素ガリウム(GaN)および炭化ケイ素(SiC)素材のワイドバンドギャップ(WBG)技術により徐々に置き換えられています。これにより受動素子、特にDCリンクコンデンサに対する要求性能は大幅に厳しくなっています。TDKは、極めて優れた素材技術と設計技術により、新しい半導体の利点を最大限に活かせる革新的なソリューションを提供します。
WBG半導体には、電源やコンバータなどのパワーエレクトロニクスのスイッチング・アプリケーションにおいて、3桁kHzのスイッチング周波数範囲で作動できる利点があります。同時に、パルスエッジが急勾配であるため、エネルギー効率により優れています。フィルムコンデンサは、その高いスイッチング周波数により、DCリンクコンデンサとして高い性能を求められています。。リード長、つまり寄生インダクタンスを最小限に抑えるために、コンデンサはバスバーによりWBGモジュールへ直接接続されます。そこで問題となるのは、WBG半導体が高いバリア終端温度で使用されるため、それがバスバーを介してDCリンクコンデンサへ伝わる可能性があることです。しかし、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)誘電体を用いた従来のフィルムコンデンサの上限動作温度は、わずか105 °Cです。
新しい誘電体による高温アプリケーションの実現
TDKは、高温でも連続使用できる誘電体の開発に成功しました。これは2つの基本的な素材を組み合わせることで実現されています。1つは、フィルムでの処理に理想的な半結晶ポリプロピレン、もう1つは、高温に耐えられる非結晶環状オレフィンコポリマー(COC)です。結果として得られる誘電体(COC-PP)は、ディレーティングが非常に低いため125 °Cを超える温度で使用できると同時にBOPPの優れた自己回復特性を維持します。また、わずか3 µmの超薄型フィルムも生産できます。図1は、従来の BOPPと比較して大幅に向上したCOC-PPの収縮およびディレーティング特性を示しています。
優れた性能
TDKは、CADおよびFEA(有限要素解析)シミュレーション・ソフトウェアを用いて最適な内部設計のHF(高周波)電力用コンデンサを開発しました。これらコンデンサは、ESRを最小限に抑えることにより、WBG半導体が作動する高い周波数と温度において損失を減らし高性能を実現します(図3)。