TDK Electronics

EMC素子

2019年3月21日

対地漏洩電流の大幅な低減とプラントの稼働率の向上

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可変速ドライブでは、個々の部品からの対地漏洩電流が累積することにより、RCDがトリップ遮断することがあります。TDKは、こうした対地漏洩電流の大幅な減少を促進する新たな電子ソリューションであるEPCOS LeaXield™モジュールを発表しました。これにより、漏電遮断器(RCD)を効果的に使用することが可能になり、プラントの稼働率が向上します。

可変速ドライブは、産業用施設でさまざまな用途のために使用されており、通常、三相電力網から給電されています。LeaXieldの用途としては、工作機械、ポンプ、コンプレッサ、運搬システム、その他のプラグ対応ドライブなどの可変速ドライブがあります。

完全なドライブシステムは、EMC入力フィルタ、周波数変換器、およびモータで構成されています。こうしたシステムを検討する際にしばしば見逃されてしまうのが、構成機器と同様に重要なシールドケーブルです。コンバータとモータをつなぐもので、長さが200mを超えることも珍しくありません。安全上の理由から、ドライブシステムは漏電遮断器(RCD)を介して電力網に接続されています。

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図 1:

多くの状況では、すべての対地漏洩電流が累積して非常に大きくなり、漏電遮断器(RCD)が予期せずにトリップします。

可変速ドライブの重大な問題は、特に周波数変換器によって、動作中に発生する対地漏洩電流です。この電流レベルは、干渉抑制コンデンサとアースへの寄生容量、B6整流回路での整流、およびパワー半導体のスイッチングサイクルによって異なります。多くの状況では、対地漏洩電流の累積がRCDのトリップ閾値を超えてしまいます(図1)。

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図 2:

RCDトリップ閾値(青)に対する周波数範囲ごとの対地漏洩電流(赤)。1つの閾値は2.7kHz(可変漏洩電流)で超え、もう1つの閾値は150Hz(定常漏洩電流)で超えます。その結果、予期せぬRCDのトリップが発生します。

たとえば、可変速ドライブ用の標準的なRCDの場合、100Hzまでの周波数の範囲の電流でのトリップ閾値は30mAで、100Hzを超える範囲では著しく上昇します。図2は標準的なRCDのトリップ閾値を示しています。限界は1kHzを超える周波数で約300mAです。周波数変換器のスイッチングサイクルで発生する可変の対地漏洩電流は、300mAの閾値を超えてしまうことがあります。これは、たとえば図2の2.7kHzの場合です。一方、B6整流回路の整流によって発生する定常的な対地漏洩電流は、100Hzから1kHzの低い周波数で発生します。ここでもトリップ閾値はかなり低くなります。図2では、150Hzでの対地漏洩電流は約90mAに相当し、これによりすべての場合にRCDが作動します。最後に、ライン電圧をオンまたはオフに切り替える際に発生するような過渡的なリーク電流もあります。

説明したような漏洩電流は合計するとシステムの予期せぬシャットダウンをもたらし、工業プラントでは生産の中断により高い代償を払うことになりかねません。

これまで、さまざまな漏洩電流の原因に対処するような包括的なソリューションはありませんでした。システム内のアースに対する全体的な静電容量を変化させることがしばしば試みられます。たとえば、コンバータ内のフィルタコンデンサをオフにすることで、漏洩電流の150Hzの部分を減らすことが可能です。しかし、これは多くの場合、電磁両立性がもはや保証されないことを意味します。一方、EMCフィルタ内のYコンデンサの静電容量が減少すると、より低い50Hzの漏洩電流にもかかわらず、クロック周波数の漏洩電流の割合が増加します。

絶縁トランスの使用は技術的なソリューションですが、コストと設置スペースの制約でこれが不可能な場合もあります。RCDを使用しないことは代替手段にはなり得ません。これは安全上のリスクであり、危険や事故の可能性がかなり高くなります。ここまで説明してきたような方法は、技術的にもコスト的にも満足できるものではありません。

LeaXieldは漏洩電流低減の新しい基準を設定

EPCOS LeaXieldモジュールは、漏洩電流を補償するために開発されました。このモジュールはRCDとEMCCラインフィルタの間の回路に挿入します。

図3は回路図です。三相全体の残留電流を測定するために、電流センサがLeaXieldに組み込まれています。次に、演算増幅器が位相差180°の同じ振幅の電流を発生され、それは各相に容量結合されます。

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図 3:

180°位相シフトした電流が、各相に容量結合されています。このようにして生成された電流シンクによって、漏洩電流はソースに戻されます。オプションのコンタクタ接続により、漏洩電流が流れる前にすでにLeaXieldモジュールは動作準備が整っています。

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図 4:

フィルタ処理されていない漏洩電流(赤)は、LeaXieldを使用すると劇的に減衰し(緑)、RCDのトリップ閾値を大幅に下回ります。これにより、予期せぬRCDのトリップを防ぐことができます。


このようにして生成された電流シンクにより、漏洩電流はシステムにフィードバックされます。これにより、漏洩電流がRCDに流れて予期せぬトリップが発生することを防ぎます。

LeaXieldは1Aまでの対地漏洩電流を補償できます。補償効果は150Hzから30kHzまでの広い周波数範囲に及びます。図4では、フィルタリングされていない漏洩電流(赤)とEPCOS LeaXieldでフィルタリングされた漏洩電流(緑)がスペクトル範囲内で比較されています。後者はRCDトリップ閾値をはるかに下回っているため、予期しないRCDのトリップを防止できます。

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LeaXieldは270mmx60mmx119mmというコンパクトサイズなので、既存のシステムへの追加導入にも理想的です。さらに、動作に外部からの電圧供給が必要ないので、設置コストも低く済みます。

このように、LeaXieldは、広い周波数範囲にわたって漏洩電流を補償するコンパクトで費用対効果の高いソリューションを初めて提供します。これにより、漏電遮断器を使用することが可能になり、その結果プラントの稼働率が向上します。

EPCOS LeaXieldの技術データ

定格電圧 VR[V AC]305 / 530 (50 Hz)
定格電流 IR max.[A]50
漏洩電流 ILK,load [A]1
周波数範囲[Hz]150 to 30000
サイズ[mm]270 x 60 x 119
準拠
CE
注文コード
B84233A1500R000



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