産業機器向けPFコントローラ
2014年4月4日
力率改善を自動で制御
EPCOSのPFコントローラを使用すると、複雑な力率改善を全自動で実行することができます。コンデンサの開閉による接触器の接点の摩耗が最小限に抑えられ、また、さまざまなデータを同時に測定することもできます。
交流電力で変圧器やモータなどの誘導性負荷を動作させると、電圧と電流の間で位相ずれが生じることにより、利用できない無効電流および無効電力が生成されます。無効電流の生成は、コスト増を招くため、可能なかぎり削減する必要があります。適切な容量のコンデンサを進相コンデンサとして誘導性負荷と並列に接続すると、無効電力を削減することができます(図1)。これは需要家や電力会社の経費節約だけでなく、電力品質の向上にもつながります。
インダクタとコンデンサを共振回路のように並列接続すると、電圧と電流の間の位相ずれを補正することができます。理想的なケースでは、位相角が0°になり、負荷に消費されるのは有効電力のみとなります。
個々の負荷はきわめて簡単な方法で直接補正することができますが、これは例外です。エレクトロニクス産業やビル設備などの分野で実際に適用する場合には、非常に多様な開閉サイクルをもつ多数の負荷を補正しなければなりません。この補正を最適かつ自動的に行うために使用されるのが、PFコントローラ(力率制御装置:Power Factor Controller)で、TDKでは各種PFコントローラをEPCOSブランドで提供しています。その多様な機能とパフォーマンスにより、通常の補正作業はもちろん、多くの特殊な補正作業を効率的に処理することができます。ここまでチェック
システム規模に応じた製品ラインアップ
最初の手順として、システムの無効電力の総量を確認する必要があります。これは、同時に発生する可能性のあるすべての無効電力成分の合計です。次の手順として、開閉器(接触器など)の数と大きさを明確にする必要があります。これらは、基本的に負荷の数と大きさで決まります。負荷の数が少なくなるほど、十分に正確な補正を達成するには多くの開閉が必要になります。また、頻繁な開閉はコンデンサと開閉器の双方にダメージを与えるので、開閉回数も考慮する必要があります。
補正作業が比較的少ない場合、4出力のEPCOSのBR604 PFコントローラで十分です。また、BR6000シリーズには6出力または12出力、BR7000シリーズにはバージョンに応じて最大15出力を備えています(図2)。
EPCOSのPFコントローラはすべてマイクロプロセッサ制御です。力率と必要な目標値(cos ϕ)の間の差分無効電力を継続的に測定し、それに応じて、目標値の達成に必要なコンデンサの開閉が段階的に自動で行われます。このPFコントローラは以下の機能を備えています。
- インテリジェント制御
- タイプに応じた自動初期化
- 自己最適化制御
- 最大値を表示するオプション
- 4象限運転
- 広い電圧測定範囲
- アラーム出力
また、電圧、電流、周波数、有効電力、皮相電力、無効電力、高調波、cos ϕ(力率)などの主要なグリッドパラメータをディスプレイに表示することもできます。また、最大値の表示および試験運転オプションにより、簡易な故障解析とシステム監視が可能です。インタフェースのあるPFコントローラの全バージョンには、対応するWindows用ソフトウェアのBR7000-SOFTが同梱されています。このソフトウェアを使用すると、PCへの全パラメータの表示と保存、データのグラフ解析と評価、PCによる制御装置パラメータの保存と編集、および1台以上のPF制御装置のオンライン動作が可能になります。
BR604を除くすべてのPFコントローラは、10カ国語(チェコ語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、オランダ語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語、トルコ語)のメニューを提供します。リレー出力またはトランジスタ出力を含む12種類が現在利用可能です。
動的補正型PFコントローラに最適なサイリスタモジュール
従来、コンデンサの開閉は、PFコントローラのリレー出力で駆動する接触器を通じて行われてきました。この開閉方式では、接触器の接点部の摩耗が避けられず、コンデンサにも相当なストレスが加わります。この影響が顕著になるのは、コンデンサがまだ完全に放電していない場合、および(最悪のケースでは)位相ずれの状態でコンデンサが電力線に再接続された場合です。そのため、接触器を使用する力率改善システムが適しているのは、開閉動作の発生が比較的少ない場合に限定されます。
産業エレクトロニクス分野、たとえば、溶接装置、プレス機、エレベータといったさまざまな駆動方式の機器は、頻繁に開閉されることにともなう問題が発生します。この分野に適用する場合、コンデンサの開閉には動的補正PFC向けEPCOSサイリスターモジュールTSMシリーズ最適です。特に年間5000開閉サイクルを超えると予想される場合は、こうしたサイリスタモジュールを使用する必要があります。TSMシリーズは5ミリ秒というきわめて短い開閉時間、摩耗ゼロ、および無音開閉を特長としています。電流の零点で開閉するので、接続されたコンデンサはサージ電流から保護されます。このため、コンデンサの寿命が大幅に延びます。マイクロプロセッサ制御により、同調または離調されたコンデンサ分岐に最大14%の離調率で自動適応し、また、電圧、位相、および温度の自動監視を提供し、状況はLEDで表示されます。現在、EPCOのサイリスターモジュールは、230 V AC~690 V ACの電圧範囲および10~100kvarの補正容量に対応する8つの方式でシリーズ構成されています。
サイリスタモジュールは、トランジスタ出力を含むすべてのEPCOSのPFコントローラから駆動することができます。具体的には、BR6000-TやBR7000-TなどのPFコントローラがあります。BR6000-T6R6は、動的補正用に6つのトランジスタ出力、標準型補正用に6つのリレー出力を備えている特殊な制御装置です。
停電時のコンデンサの切断と突入電流の問題
電力ネットワークでは瞬間的な停電が頻繁に発生しています。こうした瞬間的な停電はほんの数ミリ秒間にすぎないため、多くの場合、意識すらされません。しかし、特に深刻な事態になるのは、完全に充電されたコンデンサが位相ずれの状態で停電後に再接続された場合です。その場合、コンデンサは2 × VR × 1.41の電圧に曝されます。これにより、極めて高い突入電流が発生し、コンデンサにかなりのストレスが加わります。このような事例を図4に示します。
この突入電流により、コンデンサに接続されている接触器の接点部が融解する可能性さえあります。こうした危険な状況を回避するために、すべてのEPCOSのPFコントローラにはゼロ電圧リリース機能が装備されています。これにより、停電時にコンデンサは電力線から切断され、コンデンサの放電が(40秒~60秒で)完了した後にのみ再接続されます。
EPCOSのPFCコンデンサは、力率補正に関するすべての要件を満たすように適切な解決策を提供します。主要なPFCコンデンサの概要を以下の表に示します。
表:産業用途向けEPCOS PFCコンデンサ
シリーズ | 定格電圧[V AC] | 最大静電容量[µF] |
---|---|---|
PhaseCap® Premium コンデンサ | 230~800 | 3 x 251 |
PhaseCap® HD コンデンサ(高密度タイプ) | 400~525 | 3 x 332 |
PhiCapTM コンデンサ | 220~600 | 3 x 300 |
PoleCap コンデンサ | 400~525 | 3 x 166 |