ドイチュランツベルク工場(オーストリア)
2020年11月25日
半世紀におよぶセラミックスのノウハウ
ドイチュランツベルク工場(オーストリア)は発展を続け創立50年を迎えました。開設以来、電子部品分野において高度な知見と経験を地道に積み上げ、次々と斬新なイノベーションを市場に送り出してきました。TDKグループにおける「開発・生産ハブ」の地位を揺るがぬものにしているのは、エレクトロセラミックス、ロボット、インダストリー4.0分野における卓越した技術力です。
シュタイアーマルク州は、オーストリアにおいてだけでなく、欧州においても屈指の先進研究都市であり、TDKドイチュランツベルク工場 は半世紀以上にわたり、その重要な一角を占めてきました。工場は現在、25カ国以上から集まったおよそ900人の従業員を擁し、そのうちの200人以上は、主に車載・産業・民生用エレクトロニクスや通信技術分野の新製品・ソリューションの開発に従事。工場が保有する総有効特許数は1,000件を超えています。
強力な成長ポテンシャルを有するダイナミックなポートフォリオ
ドイチュランツベルク工場から市場にもたらされた製品の数々――積層バリスタ、サーミスタ、セラミックコンデンサ「CeraLink®」、超音波センサモジュールなど――は、すでに幅広い用途に使用されており、最近は5G移動体通信などの次世代市場にも用途を拡げています。さらに、TVSダイオード(静電気放電から敏感な電子機器を保護するダイオード)などの半導体技術をベースにした革新的な製品の新規開発によって、製品ポートフォリオも拡大をつづけています。
ドイチュランツベルクから生まれた革新的な製品が秘める大きなポテンシャルを示す例として、ひときわ注目を集めているのが、「CeraCharge®」です――この世界初(2019年のリリース当初)の充放電可能なSMDタイプの全固体電池は、セラミック固体電解質の積層体で構成され、一般的な電池に用いられる電解液をいっさい含有していません。そのため、火災や爆発、液漏れの心配がなく、安全性がとくに高いのが大きな特長です。
最近の製品イノベーションには、積層圧電(ピエゾ)板をベースにした、ピエゾアクチュエータ「PowerHap™」があります。自動車やスマートフォン、タブレット、家電、産業用コントローラ、医療機器などのタッチスクリーンやマルチ機能ユーザインタフェースに使用されるこの触覚デバイスは、これまでにない加速度、発生力、応答速度で抜群のハプティクスフィードバックを実現します。
圧電ベースの低温プラズマ発生装置「CeraPlas®」は、さらに多用途に活用の場をみいだしています――プラスチック表面の印刷性やインクの濡れ性を高めるための表面処理のほか、傷口の治療、各種表面洗浄装置など、さまざまな用途での利用が期待されています。「CeraPad®」は、ESD保護機能内蔵のLED向け超薄型セラミック回路基板。自動車の車内照明システムや可変ヘッドライトといった極小スペースで高解像度の照明効果を実現します。
ロボットやインダストリー4.0に焦点
ドイチュランツベルク工場は、製品の開発・製造のほかに、もう一つ重要なコア技術をもっています。工場には世界に数拠点あるTDKの研究センターの一つ、「R&D Center Europe」が併設されており、車載/産業エレクトロニクス向けのアプリケーションやシステムの開発に取り組む一方で、同じ敷地内にある「Process Innovation Center」は、ロボットやインダストリー4.0といった生産プロセスの革新に向けたキーテクノロジーの導入拡大や専門的知見の獲得・共有のためのコーディネーションを専門に手掛けています。同センターのエンジニアは、他拠点を含む各研究開発部門での開発に先立ち、3Dプリンターで製品やプロセスのプロトタイプを作成し、最新技術を検証しています。目下取り組んでいるもう一つの重点分野は、自動運転ロボットの開発です――ロボットを活用して異なる生産プロセス間の効率的な連携の強化を図るのがそのねらいです。
ドイチュランツベルク工場の注目製品に関する詳細情報
SMD積層技術をベースにした充放電可能な全固体電池 | |
CeraLink® | セラミックコンデンサ |
CeraPad® | ESD保護機能内蔵のLED向け薄型回路基板 |
CeraPlas® | 圧電ベースの低温プラズマ発生装置 |
PowerHap™ | タッチスクリーン〔ハプティクス〕用ピエゾアクチュエータ |
産業用距離測定装置用超音波センサモジュール |
ドイチュランツベルク工場 プロフィール
製品
- セラミック積層部品
- 「PowerHap™」およびその他のピエゾアクチュエータ
- 圧電標準製品
- CeraLink®、CeraPlas®、CeraCharge®
- 超音波センサ
研究開発
- (ヨーロッパR&Dセンター)
- (プロセス・イノベーション・センター)
認証取得
- ISO 9001
- IATF 16949
- ISO 14001
- ISO 13485
- ISO 50001
沿革
1970 | Siemens Bauelemente GmbH新工場の起工式 |
1979 | ディスクバリスタの生産ラインを開設 |
1983 | セラミック部品を研究開発の主軸に据える |
1986 | 積層セラミックチップコンデンサの生産ラインを開設(初のクリーンルームの設置) |
2000 | 積層セラミックモジュールのプレシリーズ製品の生産開始 |
2004 | 圧電製品の生産拡大 |
2015 | セラミックコンデンサ「CeraLink®」の生産開始 |
2019 | 圧電ベースの低温プラズマ発生装置「CeraPlas®」の生産開始 |
2020 | 世界初の充放電可能な全固体SMD電池「CeraCharge®」の生産開始 |