インダクタ
2025年3月18日
車載PoC用大電流対応巻線インダクタの開発と量産
- 最大1600mAの大電流に対応
- 広い周波数帯域で高いインピーダンス特性を実現
- 動作温度範囲-55 ~ +155°C、高温環境での使用に対応
TDK株式会社(社長:齋藤 昇)は、車載PoC用大電流巻線インダクタ 「ADL3225VFシリーズ」(L3.2mm×W2.5mm×H2.3mm)を開発し、2025年3月より量産を開始したことを発表します。
ADASは複数の車載カメラやセンサー等により周囲の状況をセンシングして安全な運転をサポートしています。車載カメラは車のフロント、リヤ、サイドに配置され、その映像を支援システムで制御して安心安全な走行を実現しています。車載カメラの回路構成は、バッテリーを電源としてECUと呼ばれる制御回路を介して車載カメラに接続されています。ECUと車載カメラの接続には通常、信号線と電力線の2本で構成されていますが、PoCはこれらを1本の同軸ケーブルで実現する通信方式です。PoCは車内に配線されたケーブルを削減できるメリットがあり、車両重量の軽量化と低燃費化を実現します。さらには二酸化炭素の排出を抑制し、クリーンな地球環境に貢献します。
ADL3225VFシリーズは、ADL4532VKシリーズ(2025年2月13日リリース)の実装面積を約45%削減しつつ同等の定格電流1.6Aを実現しました。PoCは信号を処理する前に、信号と電力を分離するために複数のインダクタで構成されたフィルタが必要になります。従来品ADL3225VM-2R2Mと比較して独自の材料設計と構造設計により定格電流を約20%向上させながら、300MHz~1100MHzの高い周波数帯域で高インピーダンスを実現し、インダクタの使用数削減と省スペース化に貢献します。また、高温環境下での使用を想定した製品設計により、動作温度範囲上限が155°Cとなる高信頼性インダクタです。
今後も車載PoC用インダクタ開発を巻線工法に加え、積層、薄膜の3種の工法を用いた最適化設計により、市場ニーズに対応した豊富なラインアップの拡充を行いPoC伝送信号の品質向上に貢献して参ります。
特徴とアプリケーション
主な用途
- 車載カメラ用PoC回路
主な特長と利点
- 最大1600mAの大電流に対応し、車載カメラの高機能化に対応
- 広い周波数帯域で高いインピーダンス特性を実現し、インダクタの使用数削減と省スペース化に貢献
- 動作温度範囲-55 ~ +155°C、高温環境での使用に対応
語彙集
ADAS:Advanced Driver-Assistance Systemsの略称。先進運転支援システム
ECU:Electronic Control Unitの略称。自動車における各種機能を制御する装置の総称
主要データ
製品名 | インダクタンス [μH] ±20% @100KHz | 直流抵抗 [ohm] max. | Isat. [mA] typ. 25deg.C | Itemp. [mA] typ. 105deg.C | Itemp. [mA] typ. 125deg.C |
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ADL3225VF-R49M-TL000 | 0.49 | 0.11 | ≥2000 | 1600 | 1250 |
Isat.25°C: インダクタンス変化率に基づく場合(公称インダクタンス値に対して –30% 以下) Itemp.105°C: 温度上昇に基づく場合 ( 自己発熱による温度上昇 50°C) Itemp.125°C: 温度上昇に基づく場合 ( 自己発熱による温度上昇 30°C) |