TDK TDK Electronics

パワーコンデンサ

2020年6月3日

高信頼性設計のフィルタコンデンサ

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パワーエレクトロニクスの入出力回路には、必要な電力品質やEMC性能を達成するための高精度なフィルタリングが求められます。そこでTDKは、EPCOSブランドACフィルタコンデンサの新シリーズとして、高信頼性と長寿命を実現したコンデンサを開発しました。

ACフィルタコンデンサには非常に大きな電力が印加されるため、高い安全性と信頼性が求められます。パワーエレクトロニクス向けコンデンサの国際規格である「IEC-61071」は、パワーコンデンサに対して、不具合発生時に作動する保安装置(safety device)の内蔵を義務づけています。従来こうした保安装置には、コンデンサ巻回部の配線に切り欠き部(notch)を設けた、内部配線切断式による緊急遮断装置(breakaway quick-closing device)を使用するのが主流でした。短絡時や過負荷時にコンデンサの内部圧力が上昇すると、配線溝(groove)が伸張し、切り欠き部で配線が切断される仕組みです。図1にこの従来型保安装置の動作原理を示します。

ところが、こうした従来型の保安装置では、配線がネジ端子部にはんだ付けされるため、はんだ付けの工程で端子部が変色(酸化)したり、塗装が剥がれるといった短所がありました。さらに、使用状況によっては、外装ケースから充填樹脂が漏れ出て他の電子部品に損害を及ぼすことも懸念されます。加えて、こうした設計は振動に弱いのも難点です。大きな機械的衝撃が加わると、相結線が切断されて(図1)、コンデンサが完全に故障するおそれもあります。こうした事例は主に、コンプレッサや風力発電機といった強い振動が生じる機械によって、また輸送時に発生しやすく、結線の切断によって各相の回路が遮断されて電流がストップすると、コンデンサは動作不能に陥ってしまいます。

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図 1:

過負荷時には、配線溝の膨張にともない、切り欠き部で配線が切断される。                                                                

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図 2:

新たな「ソルダーレス接続式」保安装置により、「はんだ付け結線式」はいまや過去のものに。これにより、信頼性も格段に向上した。


ソルダーレス接続によって安全性が向上

そこでTDKは、より信頼性の高い「ソルダーレス接続」による保安装置を新規に開発し、EPCOS ACフィルタコンデンサの新シリーズ、「MKD-AC B3237*」(EPCOS「MKP-AC B3236*」の後継シリーズ)に組み込みました。この新たな保安装置では、はんだ付け結線の代わりに、中実ネジ接続方式(solid screw connection)を採用。正常動作時には、ネジ端子の基端部がコンデンサ巻回素子に接した銅ストリップを押下していますが、なんらかの異常が起こって内圧が上昇すると、コンデンサの上蓋がネジ端子とともに(均一な水平力によって)押し上げられ、ネジ端子と銅ストリップとの接触が遮断されることで、コンデンサの保安装置が作動する仕組みです。こうした設計により、はんだ付けにともなう問題点が克服されただけでなく、コンデンサの機械的耐振動性も大幅に向上しました。図2に、「ソルダーレス接続式」保安装置の動作原理を示します。

高耐熱設計により長寿命を実現

この新たな保安装置を標準で備えたコンデンサのもう一つの重要な利点は、「長寿命」であることです。「IEC61071」規格に準じて実施された耐久試験の結果に基づく寿命推定によると、本コンデンサの標準的な期待寿命は、+85 °Cのホットスポット温度で10万時間となっています。図3に示すように、メタライズドフィルムの寿命は、基本的に、動作時の定格電圧とホットスポット温度(Ths)に依存します。 

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図 3:

ホットスポット温度(Ths)と電圧(VRMS)に応じた期待寿命(時間)


従来設計では、配線はコンデンサ巻回素子の中央の巻芯部を挿通しています。従来品「MKP-AC」の設計では、動作時に銅ケーブルに特定の実効値の電流が流れると、銅線の温度上昇にともない、巻回素子の温度も上昇します。このとき、巻回素子の外側と中心部の温度差は15~20℃にも達します。これが、コンデンサの寿命を短くする要因となっています。

そこでTDK Electronicsは、フィルタコンデンサの設計を大幅に改良し、「MKP-AC B3236」をアップグレードした「MKD-AC B3237*」シリーズを新規に開発しました。丸銅線の代わりに低抵抗の平角銅線を採用することで、銅線の発熱を大幅に低減。さらに、これらの平角線を巻回部の外側面に配してアルミ外装ケースへの熱結合を高めることで、放熱性も大幅に向上しました。新たな堅牢設計によるコンデンサは、定格電圧印加、最高ホットスポット温度で、10万時間以上の寿命を実現しています。図5に設計原理を示します。

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図 4:

従来型の配線切断式の保安装置を備えたACフィルタリングパワーコンデンサ                                                                                                                                                                                                              


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図 5:

低抵抗の銅線を用いることで、コンデンサ外装ケースへの熱結合が高まり、放熱性が向上した結果、コンデンサの寿命が延びた。


三相設計により省スペース化を実現

今日では、駆動システムや太陽光発電設備・風力発電所用のパワフルなコンバータは三相設計が主流となっています。ところが、多くのパワーエレクトロニクスメーカーはいまだに、入出力フィルタリングに三個の単相コンデンサを使用しているのが実情です。対して、三相フィルタコンデンサには、以下のような多くの利点があります。

  • 場所をとらない
  • 体積削減
  • 軽量
  • 部品員数削減
  • 故障リスクの低減
  • 省人化

具体例を挙げると、一個の三相コンデンサ「MKD-AC B32377 A3107J030」で、三相の電力負荷に要する三個の単相コンデンサ(B32373 A3107J030)を置換でき、これと同等の耐電圧と必要な静電容量を確保できます。

この例では、一個の三相コンデンサによるソリューションは、三個の単相コンデンサを使用した場合と比較して、22%の体積削減(コンデンサ間のスペースは考慮しない)、50%の軽量化が可能なうえ、最大40%のコスト節減も見込めます(コンデンサのみの調達コストに基づく)。加えて、配線数削減(三個の単相コンデンサでは6本の相ケーブルが必要であるのに対し、一個の三相コンデンサでは3本の相ケーブルのみ)、労力の軽減(コンデンサの実装時)、故障リスクの低減といった利点も挙げられます。 

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図 6:

三相ソリューションは単相ソリューションと比べて、所要スペース、重量、信頼性の点で大きなメリットを提供。


三相フィルタコンデンサの利点(単相コンデンサと比較した場合)を下表にまとめます。

パラメータ単相三相
静電容量 [µF]100100
電圧[Veff330330
電流[Ieff3633
重量[kg]0,71,4
半径[mm]7575
高さ[mm]117275
トータルソリューション3×単相1×三相
相ケーブル数[-]63
総重量[kg]2.11.4
総体積[cm³]15511215
総静電容量[µF]3x1003x100