TDK Electronics

サーミスタ

2016年5月11日

半導体の温度管理

パワー半導体はエレクトロニクス業界の主力商品となっています。その温度管理はコンポーネントの動作信頼性と寿命にとってきわめて重要です。この目的のために、TDKは高信頼性の温度監視を可能にする多種多様なEPCOS NTCサーミスタとPTCサーミスタを提供しています。

パワー半導体は、数W程度から数kWまでに及ぶ範囲の熱損失を発生するので、これを放熱する必要があります。その温度管理を目的に、パワー半導体の筐体はより効率的に放熱できるようにヒートシンクに実装する設計となっています。ヒートシンクの放熱特性は熱抵抗[K/W]として測定され、この値が小さいほどより大きな放熱能力があることになります。半導体の最大発熱量と予想される最高周囲温度が分かっている場合、接触熱抵抗を考慮して必要なヒートシンクを決定することができます。

対流による自然空冷のみでは、すぐに限界に達します。電力消費がきわめて大きい割にチップの表面積は小さく、この方法では十分な冷却を保証することはできません。また、ヒートシンクの大きさは装置のコンパクト化の障害となります。この唯一の改善策は、ファンによる空冷や、空冷と水冷を組み合わせた熱交換器を使用する強制放熱でシステムを冷却する方法です。この方法は多くの場合、調整が必要ありません。

電源装置やコンバータ、またはPCやノートPC内のプロセッサなど、多くの用途では、消費電力は負荷と関係します。エネルギーバランスの改善とともに、不要なノイズの発生を避けるためにも、定められた限界温度に達した場合のみ、強制放熱を有効にする方法が多くの場合に推奨されています。多様な用途のために、数多くのバージョンをもつEPCOSサーミスタは、これらの限界温度を検出するために理想的な素子です。
サーミスタは正の温度係数をもつPTCサーミスタと負の温度係数をもつNTCサーミスタに大別されますが、その抵抗特性は全く異なる曲線となります(図1)。

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図 1:

PTCサーミスタとNTCサーミスタの抵抗特性

特定の温度を超えると、PTCサーミスタ(左)は抵抗がきわめて急激に上昇するため、限界温度センサに適していることがわかります。一方、NTCサーミスタ(右)は高い直線性を示すため、温度測定に適しています。

PTCセンサによる高信頼性の温度監視

急勾配の曲線となるPTCサーミスタは、特定の温度に達するとファンをオンにする用途など、限界温度の監視に非常に適しています。PTC特性のさらなる長所は、PTCサーミスタを直列接続することにより、複数のホットスポットを監視する温度センサとしての機能が、きわめて簡単に実現できることです。直列接続されたこれらのPTCセンサのいずれかが、定められた限界温度を超えると、すぐ回路が高抵抗状態へ切り替わります。この仕組みは、たとえばノートPCのメインプロセッサやグラフィックスプロセッサ、その他の発熱部品を監視するためのSMD PTCセンサとして応用することができます。

PTCセンサは3相モータの巻線温度の監視にも利用されます。TDKは容易に巻線に一体化できるように最適化された特殊タイプのPTCセンサも提供しています。
限界温度監視用の各種タイプのPTCセンサを図2に示します。

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図 2:

各種タイプのEPCOS PTCセンサ

左から右に、プリント基板に搭載するSMD PTC温度センサ、モータ巻線に一体化するPTCセンサ、ヒートシンクに装着するラグ付きPTCセンサ。

限界温度を記録するためのスイッチング原理

図3は限界温度を監視するため、PTCセンサを2つ直列接続した簡単な回路を示しています。TR1と2つのPTCセンサは、コンパレータとして機能するオペアンプの非反転入力に供給する分圧器を形成します。25℃におけるPTC直列接続抵抗値の2倍程度に対応するように、TR1の最大値が設定されています。
微調整のためにTR1の値を適宜設定することができます。低温状態においては、電位は反転入力の基準電位よりもさらに低い非反転入力として存在します。これは負の電圧がコンパレータの出力に存在することを意味します。そして、PTCセンサの一方または両方が限界温度に達すると、分圧器の電位が変化してコンパレータが正の出力信号に切り替わり、トランジスタをトリップさせます。

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図 3:

PTCセンサを用いた温度監視回路

2つのホットスポットを監視するための回路: たとえば、限界温度を超えるときにファンのスイッチをオンにすることができます。

1つのセンサで2つの温度を検出

PTCサーミスタばかりでなく、NTCサーミスタも温度監視に使用することができます。特性の直線性が強く要求される場合、とりわけ好適です。

NTCセンサを使用して高信頼性の温度監視を実施する方法を、高性能オーディオ回路の最終段において2つの温度を検出する例で示します。ハウジング寸法をできるだけ小さくするために、TO-3パッケージの8つの出力トランジスタが、エミッタ抵抗とともに冷却ファンユニットに搭載されています。4つのヒートシンクが互いに点対称に配置されていて、それぞれのヒートシンクに2つのパワートランジスタが取り付けられています(図4)。

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図 4:

組み合わされたファン/冷却ユニット

この設計では4つのヒートシンクそれぞれを温度監視しなければなりません。

出力トランジスタの温度監視には特別な注意が払われます。これらは互いに電気的および熱的に絶縁された4つのヒートシンク上に配置されているので、それぞれのヒートシンクを個別に監視しなければならないからです。これは、適切なディメンションのトランジスタであっても、許容誤差がわずかに不均一な負荷分布をもたらす可能性があるからです。温度監視は1つ以上のヒートシンクの温度が85℃に達するとすぐファンをオンにし、温度が約100℃に達すると負荷を下げる、という2段がまえで行われなければなりません。

このデュアルな機能は1つの温度センサで実行されますが、EPCOS NTCセンサのK45またはM703シリーズはこの目的にきわめて好適です(図5)。

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図 5:

ヒートシンク取付用EPCOS NTCセンサ

ラグ(左)またはネジ付きボルト(右)により、EPCOS NTC-センサはヒートシンクと非常によく熱接触します。

各ヒートシンクには、10kΩのR25とK45 EPCOS NTCサーミスタが選択されました (B57045K0103K000)。データシートによれば、85℃で抵抗比RT/R25は0.089928で約900Ωの抵抗となり、100℃では約550Ωの値になります。デュアル温度測定には2つのコンパレータ回路が必要です。これらの条件を満たした完全な回路を図6に示します。

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図 6:

オーディオ回路最終段のデュアル温度保護

この回路で4つのヒートシンクを温度監視できます。85℃以上の温度でファンを起動し、好ましくない条件下で温度がさらに100℃に達すると負荷を拒絶します。これはDC電圧保護回路が正信号を受けとり、リレーをトリップさせることで実施されます。

2つのスイッチングの閾値の基準は2つの可変抵抗器R7とR8(それぞれ2.2kΩ)で設定されます。これらは前述した900Ωまたは550Ωのレベルに設定されています。必要な8つのコンパレータ(U1A–U1DとU2A–U2D)には、経済的なLM324アンプが使用されています。

ジャンパモードで全負荷における数時間の持続試験では、ファンは85℃で確実にスイッチオンしました。システムは温度条件で比較的低速になるので、通常よくみられるようにコンパレータのヒステリシス回路を接続する必要はなくなりました。高温での絶縁を試験するために、最終段はファンと切り離して試験しました。安全な切り離し温度は103℃と測定されました。R8で微調整することによって、この値をぴったり100℃に設定することができました。

きわめて幅広い範囲の特性、設計および取り付けオプションにより、EPCOS NTCセンサとPTCセンサは、考え得るほとんどのアプリケーションにおける温度管理を確実に実現することができます。



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