TDK Electronics

LANコネクター用SMDパルストランス

2014年11月24日

省スペースかつ自動化ラインに適した設計

TDK のLAN用パルストランスALTシリーズは、自動化ラインで量産化される先進のSMD部品です。標準LAN コネクタ(RJ45)に収まる小型・高性能・高信頼性のパルストランスモジュールを実現します。

無線LAN、Bluetoothなどによる無線ネットワークの利用は、スマートフォン、タブレットなどのモバイル機器にまで急速に拡大しています。しかし、データ転送速度、ノイズ耐性、運用セキュリティ、信頼性、安定性などにおいて、有線LANは依然として確固とした優位性を保持しています。このため、有線LANの代表的規格であるイーサネット(Ethernet)のLANコネクタは、パソコンはもとより、デジタルテレビなどのAV機器にも搭載されるようになり、サーバやルータなどのネットワーク機器における搭載数も増えています。

イーサネットにおいては、矩形のパルス波をケーブルで伝送するためにパルストランスが必要になります。一般的なトランス(変圧器)と同様に、パルストランスもまたコアに1次巻線と2次巻線をほどこした構造となっています。これはLANインタフェース部において、入力と出力を電気的に絶縁して、ICやネットワーク機器を保護する役割を担っています。また、矩形のパルス波はさまざまな周波数成分からなるため、広い周波数範囲にわたって波形の歪みを防止する必要があります。そこで、TDKは高性能フェライト材をコアとするLAN用パルストランスALTシリーズを開発しました。

LAN用パルストランスは、コモンモードノイズの侵入や流出を抑えるために、一般にコモンモードフィルタと組み合わせたモジュールとして使用されます。これをパルストランスモジュールといいます。また、このパルストランスモジュールを標準LANコネクタであるRJ45コネクタ内部に組み込んだものは、コネクタモジュールといいます(図1)。しかし、RJ45コネクタ内部に組み込むためには、LAN用パルストランスは、かなりコンパクトにする必要があります。

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図 1:

代表的なLANインタフェースの構成(100BASE-TX)

パルストランスモジュールは、2個のパルストランスと2個のコモンモードフィルタで構成されます。

従来、パルストランスモジュール用の電子部品として、トロイダルコア(リングコア)のパルストランスやコモンモードフィルタが使われてきました。トロイダルコアは、ギャップをもつコアと違って漏れ磁束が発生しにくく、すぐれた特性が得られるからです。しかし、トロイダルコアでは手動巻線に頼らざるを得ず、結果として特性のばらつきが生じて、品質の安定化や量産化の支障となっていました。TDKのLAN用パルトトランスALTシリーズは、こうした制約をブレイクスルーするとともに、小型化もあわせて達成した画期的な製品です。

自動化ラインに対応した設計

イーサネット接続機器がますます普及するにつれ、SMD型のLAN用パルストランスの需要も増加しています。こうした市場ニーズに応えるとともに、性能や品質の向上、小型化などの要件に対処するために、TDKは自動化ラインで量産可能な新タイプのSMD型LAN用パルストランスを開発しました。これはSMD型のコモンモードフィルタで確立された設計と工法を応用したものです。自動巻線したドラムコア(DRコア)に、平板状のプレートコア(SPコア)を合体するという工法で、これによりトロイダルコアを用いた場合と機能的に同等になります。

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図 2:

ALTシリーズパルストランスの設計

TDKのLAN用パルストランスALTシリーズは、自動化ラインで製造されます。2本のワイヤを自動巻線したドラムコア(DRコア)に端子電極を形成してから、耐熱性・耐湿性にすぐれた接着剤でプレートコア(SPコア)と接合します。これにより、トロイダルコアと同等になり、磁束は両コアの内部を還流します。

ALTシリーズのフェライトコアは、一般的なLAN環境の温度範囲にわたって高い透磁率と高い飽和磁束密度を兼ね備えたNi-Zn(ニッケル・亜鉛)フェライト材をベースとします。ALTシリーズではコイルの自動巻線のみならず、巻線と端子電極との接合に熱圧着を採用しています。また、回路基板への自動実装にも対応します。こうした全自動工程は、製品を均一かつ安定した特性と品質で量産化するうえで重要の鍵となります。

省スペース部品の高性能化

TDKの LAN用パルストランスALTシリーズは、実装面積が4.5×3.2mm、高さが2.8 mmのALT4532(高さ2.2 mmの薄型タイプもあります)に続き、これをさらに小型化したALT3232(3.2 ×3.2×2.8mm)が製品化されました。そのコンパクトな形状により、TDKの小型コモンモードフィルタACMシリーズと組み合わせることで、より小さなパルストランスモジュールの設計が可能になります。100BASE-TX向けのパルストランスモジュールとして、TDKの2個のALT4532パルストランスと2個のACM2012コモンモードフィルタを組み合わせた例を図3に示します。その実装スペースは、従来のパルストランスモジュール(実装スペース86 mm²)よりも約30%小さくなっています。また、よりコンパクトなALT3232を用いた場合では、50%も小さくなっています。

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図 3:

ALTシリーズのLAN用パルストランスによる省スペースソリューション

TDKのパルストランスALTシリーズとコモンモードフィルタACMシリーズは、いずれも先進の材料技術と自動巻線技術により製造されており、パルストランスモジュールを標準的なLANコネクタ(RJ-45)の内部に搭載できるコンパクトなサイズです。

SMD型LAN用パルストランスALTシリーズは、そのコンパクトな形状にもかかわらず、きわめて低い挿入損失を特長としています。ALT4532Mの挿入損失は0.1~100 MHzの周波数範囲で1.5 dB以下であり(図4)、これはALT4532Mよりも大きな既存製品の特性と同等です。また、より小型化されたALT3232Mの挿入損失は、同じ周波数範囲で2.5 dBとなっています。ALT4532MおよびALT3232M、それぞれ35 pFと25 pFという低い線間容量により、高周波数で特に低い挿入損失値が得られています。

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図 4:

SMD型パルストランスALTシリーズの挿入損失(代表値)

LAN用パルストランスALTシリーズの挿入損失は、きわめて広い周波数範囲で1 dBをはるかに下回っています。

有線と無線が融合したネットワークソリューション

ALTシリーズは、コンパクト形状や全自動生産工程のメリットにより、小型・高性能・高信頼性のコネクタモジュールを実現するとともに、有線LANのさらなる高速化に対応する先進のコンポーネンツです。また、TDKではサーバやルータのコネクタモジュールに最適な小型・高速対応・高信頼性品、FA機器向けの広範囲温度保証品など、製品ラインアップのさらなる拡充を図っています。
有線・無線が融合した次世代高速ネットワーク社会に向け、TDKは素材技術、プロセス技術、評価・シミュレーション技術、デバイス&モジュール技術、生産技術というコアテクノロジーと広範なノウハウを活用しつつ、先進のLAN関連製品の開発と提供に努めてまいります。

表: LAN用パルストランスALTシリーズの主な仕様
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 Table_ja

ALT4532M-201-T001ALT3232M-151-T001
インダクタンス[µH]
(DCバイアス8 mA、100 kHz)
200(min.)150(min.)
挿入損失[dB]
(0.1~100 MHz)
1.5(max.)2.5(max.)
線間容量[pF]
(100 kHz)
35(max.)25(max.)
動作温度範囲[°C]-40~+85-40~+85
寸法[mm]4.5 × 3.2 × 2.83.2 × 3.2 × 2.8

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