過電圧保護
2017年3月2日
欠くことのできない保護対策
インテリジェントサーモスタット、アクセス制御、盗難警報機などのスマートビルディングやスマートホーム用アプリケーションは、標準的な建物管理システムとしてより広く受け入れられています。こうしたアプリケーションの中でも、人々の命と資産を守る火災警報システムは特に重要です。TDKは、火災警報システムの信頼性にとって重要である各種EPCOSコンポーネントを提供しています。過電圧保護ソリューションはその中でも特に重要です。
オフィスビル、ホテル、空港、ショッピングセンターなど大勢の人々が利用する建物は、自動火災警報システムを備えていなければなりません。これは、センサ、アクチュエータ、電源、データ伝送装置からなる複雑なシステムです。通常、個々の火災検知器はネットワークでコントローラに接続されています。建築の構造やレイアウトによって、リング型や星型ネットワーク・トポロジーが使用されます。コントローラの役割は2つあります。まず、設置されたデバイスを一定の間隔でスキャンし、もしも探知機が作動していれば、建物内に視覚や聴覚に訴える警報を発令させるなどの必要とされる制御を行うこと、次に、LANまたは携帯電話ネットワークを利用して防火扉を閉め消防隊に連絡することです。
火災警報システムは、24Vの電源などによって動作します。停電時も機能し続ける必要があるので、UPSが電源装置に接続され、停電が継続しても電圧を供給し続けます。火災検知器に加えて、動作検知器やガラス破損センサも設備に組み込まれます。基本的な火災警報システムを図1に示します。
火災検知器は、必要に応じて異なるセンサ技術が働きます。
- 煙を検知する光学センサ
- 温度上昇を検知する温度センサ
- 一酸化炭素や二酸化炭素を検知するガスセンサ
光学センサを使用した火災検知器のブロック図を図2に示します。
過電圧保護に関する厳しい要求
火災警報システムはその複雑さのために、あらゆる種類の過電圧にさらされるおそれがあります。過電圧は、データケーブル、電源ケーブルの両方で発生することがあります。また、システム内でケーブルがかなりの長さになり、さまざまな場所でケーブル結合があり得る状態の場合、問題は悪化します。発生するおそれのある過電圧の種類を図3に示します。
過電圧は電圧レベル、時間、原因によって異なります。そのため、測定される波形や標準は多様です。
ESD(静電気放電) | IEC 61000 4-2 |
サージ、雷 | IEC 61000 4-5 |
バースト、EFT (電気的高速過渡現象) | IEC 61000 4-4 |
誘導負荷のスイッチング | ISO 7637-2 |
TOV (一時的な過電圧) | 基準なし |
TDKは、すべての種類の過電圧に対応できるEPCOSバリスタを供給しています。バリスタには単板タイプと積層タイプの違いがあります
単板状バリスタは、高電圧高電流に対応するように設計されており、通常は電源の主入力側に使用されます。従来のディスクバリスタに加えて、EPCOS ThermoFuse™バリスタのT14とT20シリーズは、特にセーフティ関連のアプリケーションに向いています。対応電圧範囲は130VRMSから1000VRMSで、サージ電流耐量 は最大10,000A (8/20µs)です。
ThermoFuseのバリスタが過熱した場合、内蔵されたヒューズがバリスタをネットワークから切断し、プリント基板の発火や周辺部品の損傷を防ぐ仕組みとなっています。ヒューズとバリスタは、バリスタのコーティングのような難燃性のプラスチックコーティングに封入されています。
これらのバリスタには3つの端子があります。2つは電源ケーブル用端子、もう1つはモニタ出力端子で、それによりLEDなどでバリスタの状態を表示することが可能です。これらのバリスタは、簡単に交換ができるよう、プリント基板の端子を使って取り付けることができます
火災警報システムならびに火災検知器への電力供給バスには、IEC 61000 4-5に準拠したサージ保護を実現するCTVSサージ保護シリーズの積層バリスタが適しています。積層技術のおかげで、これらのコンポーネントは、必要に応じ異なる定格電圧用に製造できます。0805~2220ケースサイズのこの表面実装型部品は、8/20µsパルス波形で4 kV、10/700µsパルス波形で2kV時に6000 Aのサージ電流まで対応するように設計されており、エネルギー耐量は最大15ジュールです。これらの部品はIEC 61000 4-2レベル4に準拠しているのでESD保護にも向いており、ESD耐量は最大30kVです。
TVSダイオードなどの他の保護部品技術と対照的に、EPCOS CTVSバリスタは150℃まで性能が低下しません。
セーフティシステムのメーカーが求める特定部品の条件を満たすように、関連するCTVSシリーズのタイプはUL 1449(ファイルID E481997)に準拠しています。
すべての電圧レベルで1つのバリスタ
光学センサで作動する火災検知器は、追加の電圧レベルを内部で必要とします。赤外線送信機、受信機用の10Vとマイクロコントローラ用の3.3Vです。火災検知器内部で異なる電圧を変換する回路図の例を図5に示します。
24VのDCバスで供給される入力は、過電圧が流れるのを防ぐため、常にバリスタ(CTSV1)で保護する必要があります。CTVSサージ保護シリーズのCT2220K30G EPCOS SMD積層バリスタはこの目的で使用できます。最大DC電圧は30Vで、1200A (8/20µs)のサージ電流まで対応するように設計されています。それを接続ターミナルのできるだけ近くに配置する必要があります。並列に入れるTDK MLCCなどのC1コンデンサは、高周波干渉を抑えるために使われます。他にも、入力で使用できる多くの積層バリスタが、バス電圧またはサージ電圧の必要に応じてTDKの製品群から提供されています。
Q1、R1とD1から成る回路は、10Vの出力のために電圧コントローラを構成します。Q1のベースで過度の電圧上昇が生じてダイオードが破損することを防ぎ安全性を高めるために、CT0402S11ACCG EPCOSバリスタをツェナーダイオード(D1)と並列接続します。安定化した10V出力は、もう一つのバリスタ(CTVS3)で保護されています。電圧の安定化とノイズ抑制のためにセラミックコンデンサC2とC3を使用します。LDOコントローラによって発生するマイクロコントローラ用の電圧は、CDS2C05GTAバリスタ(CTSV4)で保護されています。
EPCOS CTVSサージ保護シリーズの主要データ
VRMS [V]: | 30 - 115 |
VDC [V] | 38 - 150 |
Isurge (8/20 µs) [A] | 80 - 6000 |
Wmax [J] | 0.3 - 15 |
Size (EIA) | 0805 - 2220 |
ESDは特にインターフェースに損傷を与えるので、電源ラインに加えてデータケーブルの保護も必要です。この目的のため、TDKはEPCOS CeraDiode®高速シリーズで優れた保護を提供します。タイプによっては0.6pFという低い自己静電容量のおかげで、信号品質は影響を受けません。従来のシングルチップタイプ以外に、例えば、最大4本のデータケーブル用のアレイタイプも利用できます。さらに際立った技術的な特徴は、0.5ns以下という非常に短い応答時間です。
PTCサーミスタによるショート防止
すべての火災検知器が供給バスに対して並列接続なので、たった1つの装置のショートでそのライン全体が動かなくなります。これを防ぐために、それぞれの火災検知器はヒューズを備えている必要があります。PTCサーミスタは自己リセットヒューズの働きをするので、これに最適です。動作原理:サーミスタは低温(室温)である限り、低い抵抗値を示します。ショートのように指定最大値をかなり超える電流が流れる場合、PTCサーミスタは加熱して突然高いインピーダンス状態に変わります。これにより、電流は危険ではないレベルに制限されます。ショートの原因が修正されると、PTCサーミスタはただちに冷却して元の低インピーダンス状態に戻ります。B59873C0120A570 EPCOS PTCは25℃で最大負荷電流90mAですから、火災検知器で使用するには最適です。
火災警報システムのための幅広い製品群
過電圧保護のソリューション以外にも、EPCOSとTDKの製品群は火災警報システムでの使用に最適です。これらにはインダクタや、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、およびNTCサーミスタが含まれます。NTCサーミスタは、熱に反応する火災検知器にも使用できます。