TDK Electronics

過熱検知用SMD型PTCサーミスタ

2016年7月27日

複数の発熱部を同時に制御

TDKのEPCOS PTC サーミスタ製品の中でも、「Superior」シリーズは、とりわけIT機器の熱管理に適しています。このシリーズは、応答温度の異なる機種を取り揃え、効率的かつ信頼性の高い温度管理を実現します。

EPCOSのSMD型PTC限界温度センサの「Superior」シリーズは、0805、0603、0402のケースサイズを取り揃え、70~145 °Cと幅広い検知温度範囲をカバーしています。既存シリーズに比べ、均一性の高いセラミック材を用いることにより、信頼性が大幅に向上し、リフローはんだ付け加工が可能になりました。こうした優れた特性により、当シリーズ製品は、AEC-Q200 Rev-C認定を獲得し、車載用電子機器に求められる厳格な要件を満たしています。

PTC サーミスタは、非線的な抵抗温度特性を有するのを特長とします。常温のような低温下では抵抗値は低く平坦ですが、一定温度を超えると抵抗値が急激に上昇します。このしきい値のことを、「参照温度」または「限界温度」といい、使用されるセラミック素体によってその温度は異なります。図1 は、PTCサーミスタの典型的な抵抗温度特性を示したものです。

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図 1:

PTC サーミスタのさまざまな抵抗曲線

異なる限界温度で抵抗値の急激な上昇が生じているのがはっきりわかる。限界温度や抵抗増加の傾きは、PTC サーミスタのセラミック混合比によって決まる。

常温(限界温度未満)では、PTCセンサは通常、1 kΩ未満の低い抵抗値を示します。しかし、温度の上昇に伴い抵抗値も上昇し、特定の限界温度(Tsense)に達すると、抵抗値は4.7 kΩに漸増します(精度誤差は±5 °C)。温度がさらに15 K上昇すると、抵抗値は10倍の47 kΩに跳ね上がります。PTC サーミスタは、この抵抗値が急激に変化する性質を利用して、電子部品の異常発熱を即座に検知する限界温度センサの用途に使用されます。ただ、この目的のためには、保護する部品の出来るだけ近傍にサーミスタを設置する必要があります。これにより、高精度かつ高速な熱応答性が得られるのです。

図2に示すように、PTCセンサは通常、固定抵抗器とともに分圧回路に設置されます。これにより、センサの温度検知に伴い出力電圧(Vout)が即座に変化して、スイッチングトランジスタやコンパレータといった部品を制御し、これらの作用を介して、過熱による機器の破損が防止されま

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図 2:

こうした単純な回路を用いて、低コストかつ信頼性の高い温度監視を行うことができる。

す。このようにして、送風機のオン/オフや、負荷やシステム部品のオン/オフを、低コストで行うことができるのです。

過熱を検知する回路

複数の発熱部を同時に制御

.ノートパソコンなどのIT機器では、対流冷却が不充分であるため、システム部品の温度監視が不可欠です。こうした機器では、(入力供給電源の近くにDC-DC コンバータを配置し)1個の電源回路を通して(1個または複数の)負荷に電源電圧を供給する集中給電方式に代わり、プリント基板上の各負荷の直近にDC-DCコンバータ(「負荷点(POL)コンバータ」と呼ばれる)を配置し、所望の電圧に変換する分散給電方式が採用されています

最近のPOLコンバータは高効率ではあるものの、依然、熱損失が問題となっています。多くの場合、局部過熱を防ぐために温度監視が必要です。同様のことがRAMなどのシステムユニットのみならず、プロセッサ、グラフィックスカードのチップセット、充電式電池、駆動装置などでも言えます。図3は、ノートパソコンで発熱が生じやすく、温度監視を要する部位を示したものです。。

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図 3:

ノートパソコンの発熱の生じやすい部位

PTCセンサを直列接続するだけの単純な回路を用いて、ノートPCの複数の発熱部の温度検知を行うことができる。

特定の温度を超えると抵抗値が急激に変化するPTCセンサの抵抗温度特性により、複数の発熱部を単純な回路で監視することが可能です。例えば、回路基板上やデバイス内の7箇所の温度を検知したい場合、図4に示すような、各被検知体に1個ずつPTCを配置した回路が最適な選択となります。抵抗値の変化が急峻なため、複数のPTCを直列に接続するだけで、異なる部位の正確な過熱検知が可能なのです。

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図 4:

複数の発熱部の温度検知

シンプルな直列回路で、異なる部位の信頼性の高い過熱検知が可能。こうした回路トポロジーにより、低コストでコンパクト、かつ信頼性の高い温度管理が実現する。

シンプルでありながら信頼性の高い回路形態に加え、こうした検知回路には、もう一つ大きなメリットがあります。TDK-EPCの「Superior」シリーズでは、10 Kで75~145 °Cの異なる限界温度(Tsense)をもつ各機種を提供しているため、発熱部ごとに異なる参照温度で温度検知が可能です。

図中の7個のPTCセンサすべてが限界温度未満である場合、直列接続した全センサの合計抵抗値は10 kΩ未満となります。そのうち1個のセンサが限界温度を超えただけで、抵抗器チェーンの抵抗値は10 kΩ を大幅に上回ります。したがってこの例では、分圧器を用いて異常発熱を検知することも可能です(図4)。

こうした検知回路は、電源やUPS、周波数コンバータ、サーバ、調光器、車載用電子機器といったシステムにも利用できます。また、電力損失により異常発熱が生じ易い部品として、MOSFETやIGBTといった電力用半導体に加え、インダクタやトランス、コンデンサ、モータなども挙げられます。

オールラウンダーとしてのPTCサーミスタ

PTCサーミスタは、その特徴的な抵抗温度特性により、上述の限界温度センサのほかにも、さまざまな用途に使用されています。ここでは、電流リミッタと発熱体について解説します。

電流リミッタ

PTCサーミスタは、定格温度以下では1 kΩ未満の極めて低い抵抗値を示しますが、電流が特定の限界値を超えると、電力散逸が増加して発熱し、抵抗値が急激に増大して、電流を制限します。その後、部品が冷却して限界値以下に戻ると、抵抗値も低値に復帰します。PTCサーミスタのこうした特性は、電流リミッタや自己復帰型ヒューズ用途に適しています。TDK-EPCは、これらの部品についても、リード端子型やSMD型など幅広いラインナップを用意しています。主な用途は、電気通信回線や電源などの過電流や短絡回路の保護です。

発熱体

PTCサーミスタは、ヒータのような集中的な加温用途にも用いられます。この場合とりわけ、PTCサーミスタの自己制御作用が大きなメリットとなります。発熱体が発熱すると抵抗値が増大し、熱量に比例して定電流が流れます。こうした発熱体は、自動車の補助ヒータとして、例えば、燃料経路やフィルタ、ワイパーのノズルを加温するのに用いられます。
EPCOSが独自に開発した製造プロセスにより、こうした発熱体の射出成形による成形も可能になりました。これにより、グルーガンのヒーティングノズルやファンヒータの回転翼といった複雑な三次元形状を含む、多種多様なデザインの発熱体が製造可能です。



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