TDK Electronics
xEVバッテリ充電プロセスにおける信頼性の高い温度監視

電気自動車(xEV)では、あらゆる電源部品の温度監視が、システム全体の安全性、信頼性、長寿命を確保するのに欠かせない要件となります。TDK とEPCOSの堅牢性に優れた「NTCサーミスタ」は、幅広い設計タイプを取り揃えており、こうしたタスクにおいてカギとなる部品です。

自動車の電動化(xEV)のトレンドが加速するなか、自動車メーカーやサプライヤは、新たな課題への対応を迫られています。一つの特別な課題は、xEVバッテリの充電時間を短縮することで充電システムの出力レベルが、数百キロワットを優に超えることです。これに伴う充電システムの発熱/過熱が大きな懸念材料となっています。そのため、充電スタンド、コネクタシステム、バスバー、パワーエレクトロニクス、高電圧バッテリの適切な温度監視は、急速充電にともなう一連のプロセスを安全かつ効率的におこなう不可欠な要件となります。不充分な温度監視は、システム部品の損耗や短寿命化、故障につながり、最悪の場合、異常過熱によってバッテリが発火するおそれもあります。

TDKは、E‐モビリティ・アプリケーションでの温度監視にとくに適した一連の「NTC温度センサ」を開発しました。これらのセンサを用いることで高い信頼性と安全性により優れた温度監視を実現できます。(図1)充電プロセスの最適化、熱負荷にさらされた部品の寿命向上、種々の安全性関連機能の運用が可能となります。さらに、これら新タイプの「NTC温度センサ」は、計測精度と高速応答性にも優れるため、充電プロセスにともなう発熱の監視に理想的です。

一目でわかるメリット

1 – 温度監視によるバッテリ寿命の向上

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図1: EPCOS NTCバッテリセンサは長期的な耐湿性に優れる。また、簡単に取り付けでき、顧客ごとのカスタマイズ化も可能。

高電圧バッテリは、正確に定められた温度範囲内で最適なエネルギー効率を達成します。バッテリの温度を確実に監視・制御し、過熱を防ぐことで、バッテリの寿命や安全性の向上につながります。これには、バッテリの温度を複数ポイントで測定することで、局部的な過熱を防がなければなりません。新開発の特殊なEPCOSネジ止め型(screw-on)温度センサは、湿気、結露、機械的ストレスなどの厳しい要件を満たすよう最適化され、量産自動車用に認可されたセンサです。堅牢性と耐湿性に優れたハウジングにNTC素子を内蔵しています(図1)。バッテリ表面の適所にネジ止めで簡単に取り付けることができ、ロボットによる取り付けも可能です。標準品では、25 °Cでの定格抵抗値が10 kΩとなっていますが、NTC温度センサの抵抗値と特性曲線は、お客様の個別ニーズに応じてカスタマイズ化が可能です。標準的な計測範囲は-40 °C~+85 °Cです。


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2 – 冷媒の監視は不可欠

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図2:TDKパイプ搭載型センサはさまざまな直径のパイプに対応。着脱が容易で、応答性にも優れる。

クーラントの温度は、バッテリの動作状態を診断する目安となります。この温度は、クーラントパイプに取り付けたセンサによって信頼性の高い検知が可能です。これはクリップオンセンサの別称でも知られています。こうしたセンサは、クーラントの入口や出口に取り付けられます。クーラントラインの外部にセンサを配置することで、クーラント自体からセンサを保護するためのシーリングが不要になります。これはすなわち、クーラントライン上の特定の位置に取り付け穴を設けるソリューションと比べて、クーラントの配管設計やセンサの実装における自由度が増すことを意味します。TDKは、お客様の個別要件に応じて、センサの形状や電気的パラメータをカスタマイズ化できる幅広いソリューションを取り揃えています。

この新開発パイプ搭載型NTCセンサの特殊な点は、センサ本体とクリップ状の取り付け部が一体化している点です。これにより、センサをパイプにしっかりと固定でき、パイプとセンサの密着性と優れた耐振動性を確保できます。センサは簡単にクーラントパイプから着脱できるうえ、モジュラー設計により、さまざまな直径のパイプに対応可能です(図2)。

センサシステムの長期安定性を確保するため、使用する材料の選定にはとくに注力しました。クリップにはパイプ素材との適合性の極めて高い材料を採用。さらに、センサは冷却回路の金属パイプに巻きつけられる金属スリーブも備えており、スリーブに内蔵されたNTC素子の温度特性や電気特性と相乗的に作用しあうことで、高速応答性を実現しています。

センサシステムの結露、高温、高湿度への優れた耐性も主要なフォーカスエリアです。通常、外気温が下がると、車体と同様、センサにも結露が発生しますが、本センサは、すでに他のセンサに用いられている設計を取り入れることで、この問題の克服に成功しています。センサをプラスチックで封止して結露からの最適な保護を提供する設計となっています。また、本センサはパイプと着脱自在であるため、メンテナンス性にも優れます。


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3 – パワーエレクトロニクス用の耐高電圧バスバーセンサ

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図3: 新型TDKバスバーセンサは長期安定性と電気抵抗に優れる。

xEVのバスバー温度の直接測定は、エネルギー効率のよい電気制御を可能にするとともに、クルマの寿命を縮めることになるピーク動作負荷を防ぐのに役立ちます。この難しいタスクには、耐高電圧性に優れ、かつ、高い計測精度を確保したセンサが求められます。市場に出回るセンサの多くは出荷時の状態のみを仕様書に記載していますが、これだけでは充分とは言えません。なぜなら、主要な性能パラメータには経年劣化のおそれがあるためです。たとえば、センサの制御ユニットの損傷を防ぐには、センサ寿命に悪影響を及ぼすおそれのあるさまざまな負荷下において、センサの電気抵抗も保てなければなりません。

長期安定性に優れた新型NTCセンサは、バスバーへの搭載にとくに適した設計となっています(図3)。TDKのNTCセンサの使用温度範囲は-40 °C~+150 °C、短時間であれば最大200 °Cまで対応します。+25 °Cでの公称抵抗値は10 kΩ、B定数B25/100は3625 K、公差は±1%です。

センサは、LV 124製品耐用寿命テストに準拠した耐候性、耐化学物質性、メカニカル試験をクリアしており、また、LV 123による電気抵抗クラスH3(2.5 kV DCに相当)を達成しています。 

さらに、電線は自動車用のLV 112-4規格を満足し、EMC性能を高めるためにツイスト加工も施しています。加えて、センサには取り付け用の銅合金製M4ブラケットも付属。この材料の採用により、銅製バスバーとの優れた適合性と熱結合を確保し、かつ接触腐食を防いでいます。


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4 – コネクタシステムの安全な温度監視

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図4:TDK NTC温度センサ「NTCRP」シリーズは、フラットな設計により、コネクタシステムへの搭載に好適。

充電スタンドとクルマとを接続するコネクタシステムも、充電プロセス中に高温にさらされます。安全な温度監視を確保し、過熱による事故を防ぐために、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission: IEC)は、コネクタシステムに使用される温度センサに対し、IEC TS 62196-3 1 DIN規格に定める最低要件を満たすよう求めています。このため、優れた高温耐性による信頼性の高い測定精度が、温度センサにとって不可欠な要件となります。TDK「NTCRP」シリーズは、こうしたアプリケーション向けに開発された小型設計を特長とします(図4)。センサのフラットなハウジングにより、コネクタ接触面への最適な密着性が得られ、かつ、最大200 °Cの高温に耐えるよう設計されています。 


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5 – 長期安定性に優れたパワーエレクトロニクス用バスバーセンサ

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図5:長期安定性に優れたTDK NTCセンサ「B57703M」(温度補償・温度検知用)。

途中停止をすることなく長距離走行を短時間の充電で可能にする急速充電は、xEVの普及を加速するうえでカギとなる要件の一つと目されています。急速充電により、充電技術やバッテリの化学特性、温度次第では、従来数時間かかっていた充電時間を15~30分にまで短縮することが可能です。もっとも、そのためには非常に大きな容量の電流が必要であり、これは充電スタンドのパワーエレクトロニクスに高レベルのストレスをかけます。したがって、急速充電ではこうしたシステムの熱監視が不可欠となります。 

長期安定性に優れた新開発の温度センサは、パワーエレクトロニクスのさまざまなシステムのヒートシンクやハウジングへの取り付けに適したネジ止めタイプのセンサです(図5)。TDK NTCセンサ「M703」は、使用温度範囲が-55 °C~+155 °C、25 °Cでの公称抵抗値が5 kΩ、B定数B25/100が3964 Kとなっています。ご要望に応じて、異なる抵抗値、定格温度、公差、電線長、AWG-28ワイヤもご用意しています。さらに、「B57703M」シリーズには、UL 94 V-0に適合した難燃性コーティング加工も施しています。 


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原則として、E‐モビリティのさらなる発展にとって最も重要な要素の一つは、エネルギー効率の向上です。この点において、TDK NTC温度センサの幅広いラインアップはいずれも、長期的に安定した高精度計測を可能にすることで、E‐モビリティの発展に大きな貢献をもたらすことが期待できます。TDKは、これら高耐久性NTC温度センサと、こうした部品開発における長年の経験により、お客様をサポートしています。充電プロセス全般をカバーした信頼性の高い温度監視に求められる高度な要件を満たすことができるのも、こうした経験や実績の基層があるからです。